サイフォン現象
サイホン現象とは、2つの水槽間を配管で接続して、水管の中が水で満たされていると2つの水槽の水位が同じになろうとする作用のことで、サイフォン現象と呼んでいます。サイフォンの仕組み
液体を高い位置にある出水地点と低い位置にある送水地点を配管で接続し流す時に管内が液体で満たされている時に限り、管の途中に出水地点より高い地点があってもポンプで汲み上げることなく流れ続けます。このサイフォン現象と言います。この仕組みは液体を鎖に模して鎖が出水地点から高い位置にある滑車を経由してもう一方向へと移動します。その管内が液体で満たされていれば管内の静圧についてパスカルの原理を使って考えますと、出水地点における静圧は送水地点における静圧よりも液柱の高さの差分にかかる重力分だけ高低差ができ、この圧力差を駆動力として液体は送水地点へと流れることになります。また、どれくらい高い地点を送水することができるかですが大気圧、蒸気圧そして液体の比重によって異なってきます。最高地点で液体の圧力が蒸気圧より低くなった時には、液体は気化して比重がほぼ0(ゼロ)になり重力による圧力差が急減しますので液体が気化した時点でサイフォンは停止してしまいます。したがって、サイフォンが成立できる最大の高さは、液体の密度と出発地点の圧力によって決まってきます。1気圧下では、理論上水なら、出水地点から最高約10 mの高さを通るサイフォンを作ることが可能です。水銀の場合には、約76 cmのサイフォンが可能とされています。実用的には水の場合には、7~8mとされています。
サイフォン現象が発生する理由
サイフォン現象が発生する理由は、排水管内の水が流れる際に管内の圧力差が生じることに起因します。具体的には排水管がU字型やS字型など曲がりくねった形状をしている場合、管内の水は高い位置から低い位置へと流れ落ちます。このとき水が流れる部分で負圧が発生し、管内の水が引き上げられる現象が起きます。つまり、管の一方の端で水が流れ出すことにより、もう一方の端で水が吸い上げられるように動くのです。この動きはちょうどサイフォンの仕組みと似ているため「サイフォン現象」と呼ばれています。排水トラップ内の水はこのサイフォン現象によって水封が破られてしまうことがあります。通常、排水トラップの水封は下水管からの臭気や害虫の侵入を防ぐ役割を果たしていますがサイフォン現象により水が引き抜かれると封水が失われてしまいます。この結果、悪臭が逆流したり害虫が侵入するリスクが高まります。サイフォン現象が発生しやすい条件としては、排水管の勾配が急であったり、排水量が一時的に大量である場合に特に起こりやすくなります。また排水トラップの設計や配管の長さ、曲がり具合も影響します。例えば、管の形状が複雑であったり長い配管で水の流れが強くなると管内の圧力差が大きくなりやすくなります。加えて、水封部の水量が少なすぎる場合や詰まりなどによって排水の流れが阻害されると、サイフォン現象が促進されやすくなります。これらの理由から水道設備の設計段階ではサイフォン現象を防ぐために管の勾配や形状を適切に調整し、水封の容量を十分確保することが重要となります。また排水管内の空気の流れを妨げないように通気管の設置も効果的です。通気管により管内の空気圧が安定するため、負圧が発生しにくくなりサイフォン現象の発生を抑制できます。さらに定期的な排水管の清掃や点検により詰まりを防ぎ、水の流れを円滑に保つこともサイフォン現象の抑制に繋がります。これらの対策を怠ると水封が破られ悪臭や害虫の侵入が増加し、衛生面や快適性に悪影響を及ぼすため、建物の衛生環境を守るためにもサイフォン現象の理解と防止は非常に重要です。したがって、排水設備の維持管理においては設計から運用までサイフォン現象の発生を最小限に抑える工夫が欠かせません。