ご解説
大腸菌群数とは何か?大腸菌群数は、水質検査や食品衛生の分野で広く用いられる指標で、環境中や食品中の衛生状態を評価するために重要です。大腸菌群は腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属し、人や動物の消化器官に常在する細菌を中心とするグループです。水や食品における大腸菌群の存在は、糞便汚染や病原性微生物の混入可能性を示唆する重要な指標とされています。
1. 大腸菌群数の意義と目的
大腸菌群数を測定する目的は、主に以下の点にあります。
●衛生状態の評価
水道水、地下水、河川水、プール水、食品などの衛生管理において大腸菌群の存在は病原菌の混入リスクを示します。大腸菌群が検出される場合、感染症を引き起こす可能性のある病原性細菌、ウイルス、寄生虫が存在する危険性が高まります。
●飲用水の安全性確認
飲用水では、大腸菌群数がゼロであることが基準とされ飲料水が糞便由来の汚染を受けていないことが保証されます。
●食品安全基準の遵守
食品加工施設や飲食店では、大腸菌群数が食品の加工や保存に適切な衛生管理が行われているかを示す指標となります。
2. 大腸菌群数の測定方法
大腸菌群数を測定する方法は、主に以下の3つに分類されます。
●多管法(MPN法: 最確数法)
水や食品試料を培地に接種し、発酵により生じたガスや酸を確認して統計的に大腸菌群の数を推定します。この方法は感度が高く少量のサンプルからも検出可能です。
●膜濾過法
水試料をろ紙フィルターで濾過しフィルターを培地上に置いて培養する方法です。培養後にフィルター上に形成されたコロニーを数えることで大腸菌群数を直接計測できます。
●酵素基質法
特定の酵素を基質として利用し、大腸菌群が持つ酵素活性を検出する方法です。この方法は迅速であり24時間以内に結果が得られることが多いです。
3. 基準値と規制
日本の水質基準では、飲用水における大腸菌群数は不検出であることが求められます。また、食品衛生法や厚生労働省の指針では、食品や調理器具表面における基準も詳細に定められています。
・飲用水: 大腸菌群数ゼロ(100mL中)
・プール水: 不検出
・食品加工施設の表面試験: 一般的に10以下(CFU/cm2)とされる。
4. 大腸菌群と健康リスク
大腸菌群自体は必ずしも病原性を持つわけではありませんが、次のような病原性菌が検出される可能性があります。
・腸管出血性大腸菌(O157など): 重篤な食中毒を引き起こす。
・サルモネラ菌や赤痢菌: 下痢、発熱、腹痛などの症状を伴う感染症を引き起こす。
これらの病原体が大腸菌群に含まれる場合があるため、衛生管理において大腸菌群数の測定は重要です。
5. 実際の応用例
●水道水管理
水道水の浄水場では、定期的に大腸菌群数の測定が行われ異常値が検出された場合は速やかに浄水処理や配水系統のチェックが行われます。
●食品工場の品質管理
食品加工現場では、設備や作業者の手指、加工食品表面から定期的にサンプルを採取し大腸菌群数を測定することで衛生管理を徹底します。
●災害時の飲料水安全性確認
災害時における井戸水や簡易水源の利用では、大腸菌群数の簡易検査キットが用いられ飲料水の安全性が確保されます。
6. まとめ
大腸菌群数は、水や食品の安全性を評価するうえで極めて重要な指標です。定期的な測定と管理は、食中毒や水系感染症の予防に大きく貢献します。特に飲用水や食品の製造においては、厳格な基準を遵守することで、衛生状態を保ちつつ公衆衛生を向上させることが可能です。
ふん便性大腸菌群数
ふん便性大腸菌群数は、大腸菌群のうち44.5℃で培養したときに検出される細菌数のこと示す。
通常の大腸菌群数(培養温度:36℃)には、大腸菌以外に土壌・植物などの自然界に由来する菌種も多く含まれいますが、ふん便性大腸菌群数は、ふん便由来の菌(大腸菌)の数と同等とみなすことができます。