水道で使用される塩素系薬剤の効果

関東水道修理隊

ご解説

塩素剤の使用目的は酸化と消毒の二つである。塩素の酸化力を利用して、マンガンや鉄の酸化、アンモニア性窒素の分解などが行える。一方消毒剤としては、塩素の強い殺菌作用を利用、微生物や病原菌などを殺菌し、水の安全性を確保する。種類としては、塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム(塩素ガスを石灰に吹き込んだもの)、次亜塩素酸ナトリウム(別名次亜塩素酸ソーダ。塩素ガスを水酸化ナトリウム溶液に吹き込んだもの)などがある。

塩素系薬剤の種類・pHと消毒効果
塩素剤は、アルカリ性、中性、酸性の3種類あります。塩素剤のpHがアルカリ性になればなるほど、次亜塩素酸イオンの割合が高くなります。酸性側の次亜塩素酸とアルカリ性側の次亜塩素酸イオンとでは、殺菌力に大きな相違があり、次亜塩素酸イオンは次亜塩素酸の約1/100程度の殺菌力しかないといわれています。従って、迅速な殺菌を必要な場合にはpHが低い方が好ましいと言えます。ただし、pHが酸性になれば酸によって配管の腐食を促進してしまうおそれもあります。その他、塩素剤以外の消毒方法としてオゾン、紫外線、銀イオン等を用いる方法もありますが、塩素剤のような消毒の持続効果は期待できません。一方、最近は二酸化塩素によるレジオネラ属菌の消毒が行われるようになりました。二酸化塩素はガス体でその水溶液を安定的に保存できなかったものですが、現在、二酸化塩素自動発生装置が開発され、現場で手動混合し二酸化塩素を発生させる製剤も市販されるようになり、浴場施設の循環系に存在する生物膜内のレジオネラ属菌に対して、高い殺菌力性能が発揮されています。
二酸化塩素はプール水での使用が厚生労働省で認められており、二酸化塩素濃度を直読できる測定器も市販されています。

水道で塩素系薬剤を使用する効果
塩素系薬剤は、水道水の安全性と品質を保つために広く使用されている薬剤です。その主な効果は以下の通りです。
1. 殺菌・消毒効果
塩素系薬剤の最も重要な効果は、病原菌やウイルスの殺菌・消毒です。
対象とする微生物
大腸菌やサルモネラ菌、赤痢菌などの細菌、さらにウイルスや原生動物(クリプトスポリジウムなど)の抑制にも効果があります。
メカニズム
塩素は水中で次亜塩素酸(HOCl)として存在し細胞膜や内部のタンパク質を酸化することで微生物を死滅させます。
2. 残留塩素による再汚染防止
水道水に塩素を添加することで配水管内での再汚染を防止します。
残留塩素濃度
日本の水道法では、蛇口から供給される水の残留塩素濃度を 0.1 mg/L以上 に保つことが義務付けられ給水経路での微生物の繁殖を抑えます。
3. 臭気や色の除去
塩素は水中の有機物やアンモニアを酸化することで不快な臭気や色を取り除く効果があります。
例: 地下水に含まれる鉄やマンガンを酸化して沈殿させ見た目の透明度を向上させます。
4. トリハロメタンの生成
塩素系薬剤の使用には注意点もあります。有機物と反応することで発がん性の疑いがあるトリハロメタン(THM)が生成される場合があります。
対策
・水源水の有機物濃度を低下させる前処理を実施。
・活性炭やオゾン処理を組み合わせた高度浄水処理を行う。
5. 水質基準への適合
塩素系薬剤の使用は、水質基準を満たすために不可欠で特に感染症の予防や安全な飲用水の供給を実現するために使用されています。
6. まとめ
塩素系薬剤の使用は、水道水の殺菌や消毒、再汚染の防止において欠かせない役割を果たします。ただし、適切な濃度管理と高度な浄水処理技術を併用することで安全性を高めることが重要です。